ほしのすみかにかえるとき☆彡☆彡

☆彡自分に戻っていくまでの軌跡☆彡

花束みたいな恋をした 感想文②

「花束みたいな恋をした」。巧妙な演出、付せん回収や、主人公たちのな心の変化を感じる言い回し、細かい仕草、そして自分自身へ投影してしまうことによるえぐられたような切なさ。そういったものを消化していくべく、感想文を書こうと思います。

物語の展開も書いていくので、ネタバレになります*1ご注意ください。

 

 

同棲開始、卒業、フリーター時代

付き合いたての二人は、毎日幸せいっぱいの日々を送ります。けれど、いつまでもその幸せだけに、身をゆだねているわけにはいきません。絹の就活がはじまります。日々重なる就活のストレスで駅で泣いてしまう絹。泣いている絹に「やりたくないことはやらなくていいよ。ここにいればいいじゃん」と、麦は同棲を勧めます。特に就きたい職もなかった絹は、就活を辞め、麦との新しい生活を始めます。大学を卒業後、二人はフリーターとして社会とつながりながら、二人の生活を続けます。絹はアイスクリーム屋さんでアルバイト、麦は、自分のイラストを仕事にしたい、という学生時代からの夢があり、イラストの仕事と、実家からの仕送り、アルバイトでやりくりしていました。

楽しい同棲生活も、雲行きが怪しくなっていきます。何も変わらない二人の世界とは正反対に、周囲の人の変化が目に付くようになる麦。ファミレスでウエイトレスをしていたお姉さんは、プロのアーティストとして売れ始めました。

そして、追い打ちをかけるように、絹と麦の親が次々に二人の家を訪ねてきます(まあそりゃあ親としては、そうしたくなるでしょう)。絹の母親からは、「ちゃんと社会に出るように」プレッシャーをかけられ、麦の父親からは、「家を継がないなら仕送りを止める」と宣告され、月5万円の仕送りがなくなります。

「好きな人や好きなものに囲まれて、ただ楽しく生きていればいい」という、学生時代から続いた生き方が、徐々に難しくなってきました。

麦のイラストの仕事はというと、なかなかうまういきません。そんな時慕っていた先輩も、自分の才能(アート)では、全く生活できておらず、付き合っている女性に大人の仕事をさせていることを知ります。これらのことを通して、麦は自分の才能(イラスト)だけで生活することの難しさを痛感します。

「絵を仕事にして、絹との楽しい生活を続ける」。それが麦の理想とするところだったと思いますが、イラストで稼ぐことができない現実を目の当たりにした時、「絹ちゃんとの今の生活を維持したい」という思いを最優先することにしました。一旦絵を描くことを辞め、就職することを決意します。

 

駅から徒歩30分の新居に、毎日コーヒー片手に二人で30分かけて帰ってくるシーン、やきそばパンを歩いながら食べるシーン、二人で漫画を読んで涙しているシーンは、幸せそのもの。でした。実家に帰りたくなくなるほど、二人の生活を最高に楽しんでいた感じが伝わってきます。これぞ恋愛映画!!

 

周囲の変化や助言に揺れ動く麦と、動じない絹。無視できないお金事情

この、フリーター時代のシーンには、劇中後半に効いてくる名言(?(笑))が飛び交って、それが麦の価値観や気持ちを動かしていきます。

絹の母は言う。「社会っておふろみたいなものよ」「生きるって責任よ」。

先輩は言う。「負けんなよ。協調性とか社会性とか、才能の敵だから」。

この正反対のセリフを同時期に言われた麦。麦の優しくて真面目な性格に加え、「絹と一緒にいる」ということは、男としての責任みたいなものも感じていたのではないでしょうか。だからこそ刺さってしまう母の言葉。絵の仕事がうまくいかないことで、ふがいなさや焦りも感じていたかもしれません。そこに仕送りも止められ、生活していくためのお金問題が無視できなくなっていきます。

麦は先輩に、「絹ちゃんにもお店紹介してあげようか(彼女に稼いでもらって絵の方頑張れという先輩ならではのエール)」と提案されますが、そんなこと微塵も考えません。それが彼の優しさであったり、まっとうな人であったり、自分の絵にそれほど自信をもっていないということであったり、いろんな「麦」という人が表現されているのでしょうが、とにかく絹に頼ってまで絵を続けることを選びませんでした。同じ芸術側にいても、先輩と麦の価値観は違っています。

一方の絹ちゃんはというと、親が来て何を言われようが、何のダメージもくらっていません。昔から言われてきたからかもしれませんが、絹の母親の言うことも完全スルーしていましたし、仕送りが止められても、節約すればいいや、って感じでした。私なんかは言われたら考え始めてしまう麦タイプなので、絹ちゃんすげえーな。ってなりました(笑)。

周囲からの様々な刺激に心が動き、最終的には夢を一旦手放して就職することを選ぶ麦と、周囲の変化などお構いなしな絹。

絹は麦から就活宣言を受けて初めて、二人のお金事情に向き合い、ならば私も、と簿記の資格の勉強を始めます。

絹の母と先輩の生き方。どちらが正しい(という表現が適切とは思わないが他に表現が見つからない)のか、、、その答えのような出来事(特に麦への答えのように思う)が劇中後半で起きてくるのも、切ないながら付せん回収が面白い。

「自分の絵では仕事にならない」と認めて、生活のために別の仕事に就く、というのは、今の日本では普通のルートなのかもしれません。でも、ひとりの人生として、じっくりその心情の変化を見て行くと、やっぱり切なくなります。。。麦君の絵、売れてくれ!!ってなってしまいます。(笑)

次回、二人のすれちがいが始まる就活・就職編に続きます。

 

*1:+_+