ほしのすみかにかえるとき☆彡☆彡

☆彡自分に戻っていくまでの軌跡☆彡

花束みたいな恋をした 感想文③

だいぶ消化してしまったので、これとあと一本でおしまい。

ネタバレ含みます。ご注意ください。

 

 

就活を経て、ようやく就職できた二人。今の生活の現状維持が目的で始めた就活でしたが、社会に属するということは、今まで通りいかないこともたくさん出てきます。

特に麦は、人に対して素直な性格というのもあって、期待されたら応えようと思うし、上司との付き合いにも行くし、それに対してやりがいのようなものも感じ始めます。

とはいえ、今までいた世界とは全く違う世界。やったことのない仕事であれば、覚えるまでは大変だし、取引先に土下座しなきゃいけなかったり、同僚の起こした事件の対処に追われたり、、、「やりたくないこと」もやらなければいけない立場になります(しかも性格上、真面目にやります)。家でも仕事、家に帰らずに仕事、、、そんな日々が続き、今まで絹と楽しめていたゲームも小説も漫画も、興味を失ってしまいました。

一方、絹は、二人の「楽しい生活」の現状維持を目的にし続けます。仕事のオンオフをしっかり切り替え、アフター5は自分の趣味に。仕事場の付き合いもそこそこ。以前とかわらず、小説や映画、ゲームなどを楽しみます。しかし、麦とその楽しさを共有できないことや、麦が自分の知らない世界(麦の仕事)に家でものめり込んでいくことにより、絹は麦との距離を感じるようになりました。

現状維持できたのは、金銭的な部分だけで、一番大切だったはずの二人の楽しい生活は、次第に崩れていきます。

麦との楽しみを共有できなくなったからか、絹は仕事を仕事と割り切ることを辞め、仕事にも楽しみを求めることに決めます。絹は麦への相談なく、イベント会社の派遣社員へと転職しました。

そのことが原因で二人のけんかと、けんか中にプロポーズという事件が起きます。

心理学とか精神世界とかに詳しい人はこのシーンを観て解説せずにはいられなくなったかと思いますが、麦は、絵の仕事(やりたいこと)を諦めてまで絹との生活のためにやりたくもない仕事をやっているというのに、絹との生活のためなのに、絹のためなのに、その絹は、今、自分が諦めた未来(やりたいことを仕事にする)を選んでいる、、、、麦の奥底にしまい込んだ本音が怒りとして出てきちゃった場面でしたね。この時麦が絹に言った、「やりたくないことはやらなくていいよ」は、学生の時に絹に言ったそれとは、全く違うものになってしまっていました。今回言ったこの台詞は完全に冒頭に登場した焼肉男子に繋がります。「余裕のあるように見える男は、たいていこちらを見下してるだけ」。「結婚しようよ」も、絹にとっては見下された感覚があったのではないでしょうか。(その前から見下しシーンは何回かあったように、私は感じた。クリスマスのシーン)。

麦の考える現状維持が目に見えるもの(お金があって二人の生活が続けられる)だったのに対して、絹の考える現状維持は、目に見えないもの(二人で楽しみや愛しさを共有する時間)だった。何故、このまま現状維持のためにもう一歩踏み出さないの?と思う麦と、何故、現状維持できていない(コミュニケーションは頻繁にとりたい、と伝えてあったのに、それが減っている状態で何故結婚??)この状態で進めようとするの?と思う絹。だんだんと気持ちのズレが生まれます。

やっぱり思うのは、コミュニケーション不足です。二人は思うことをそのまま相手に話したら良かったのに。ただ、思うことを話すためには、自分が何を思っているのか、何を大切にしているのか、自分自身が認識している必要があるので、認識不足だと、話し合いすることも難しかったのかもしれません。

良くも悪くも、仕事を頑張り過ぎて、趣味をやっても全く集中できない、、、この経験、いたいほどわかるから、麦の気持ちもわからなくないです。イタい場面でした。。

二人の溝が決定的になった出来事が起きます。

麦の先輩の死。

「お酒飲んでお風呂で寝てしまって死んだ」。絹の母が社会とはお風呂のようなもの、と麦に説いていたように、この映画では、社会のことをお風呂と表現しています。

社会を敵だと言っていた先輩がお風呂(社会)で死んでしまう、、、社会との繋がりを捨て、アートだけで生きていくことができなかった、という結果の比喩表現のように思えます。麦の人生への答えが、この比喩表現で表されたのではないでしょうか。

麦は、先輩のことを「酔うと海に行こうと言う人だった」と言い、

絹は、「酔うと女の子に絡む人だった。彼女に暴力も奮った」と言います。

先輩への思いに温度差があると気がついた絹は、麦の悲しみに寄り添えないと感じ、一人寝てしまいます。一方、絹も同じように先輩の死を悲しんでいると思い込んでいる麦は、今晩は先輩の話を二人ですることを期待しましが、その希望は叶いません。

そして次の日、二人は思いました。

「どうでも良くなった。」

相手に期待すること

相手のために、という思い

仲を回復しようとすること

二人の生活の維持

結婚

そういう、二人の間の全てが、どうでも良くなってしまいました。

次回、結末になります。最後、ファミレスの涙について考察したら、私はすっきりこの映画とさよならできます。笑よろしければ今しばらくお付き合いください😊